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歯科矯正相談室からの回答:小児歯科矯正治療と非抜歯への疑問

ご質問は, 1歳半健診や3歳児健診の際に問われる歯科矯正相談のうちもっとも多い質問の一つです.

 まず, 基本的に不正咬合のほとんどは遺伝的なもの, つまり顎が小さい大きい, 歯が小さい大きいなど, 生まれつき持つ素材が調和していなければ不正咬合になります. その意味で, 不正咬合の予防にはかなり限度のあるものです.

 「早く始めた方が直るのに時間がかからない」
 「すぐにでも歯科矯正することをすすめられた」

 早期の歯科矯正治療がすべてを解決するかのように唱える小児歯科医が一部にいますが, 患者さんに不安感を煽り, また過大の期待を抱かせてしまったり, いたずらに治療期間を長くすることに歯科矯正医は警鐘を鳴らしています.

 歯科矯正医は, 大人の歯がすべて出そろって, それをきちんと咬み合わせるところまで管理しなければいけませんので, 治療期間を長引かせないためにも実際の治療にはあまり早くから入りません. 高名な歯科矯正医の言葉に「注意深い観察下に放置せよ」というのがありますが, 健診では「上の大人の前歯が出てきて, 親の目から明らかに不正と思えたら見せに来てください」といっています. 年齢でいえば6〜8才でしょうか.

 ただ, 色々なケースがありますので, すぐ治療には入りませんが2歳半でも個々に生 活上の注意(癖や食べ物など)について指導しながら, 年に一度ぐらいの定期的な経過観察をするケースもあります. みゆママさんには, 今はあまり焦らず虫歯の予防と正しい食習慣に気をつけ, 健康な心の発達の方に心を向けられることで良いかと思います.

 「乳歯を歯科矯正することで永久歯も誘導できる」
 近代歯科矯正臨床の永い歴史の中で, 乳歯を歯科矯正することで永久歯も誘導できるという考えを信じている(小児歯科医を除いた)歯科矯正医は, 今はほとんどいないのではないでしょうか. この考えのもとに, 小児歯科医による超早期的な歯科矯正治療に入ったケースの“後始末”を, 多くの歯科矯正医が経験しているはずです. その意味で, もう“ひとつの歯科矯正医”の意見が普通であり, 無難な選択だといえます.

 何よりもこの時期の受け口は, 永久歯の萌出時に自然治癒してしまう可能性もありますので, 先に述べた時期まで注意深い観察下に放置して十分です. 小児歯科医が手遅れだといっても, 歯科矯正医がしっかり面倒を見てくれますので安心してください.

 「非抜歯の考え方をされている」
 歯を抜かないで済むなら抜かないに越したことはありません. 誰でも[抜いて治しますか, 抜かないで治しますか]と聞かれれば, 「抜かないで」と応えるのが人情でしょう.

 歯科矯正治療の質問の中で, 最も多いものの一つが抜歯に関するものですが, 抜歯をできるだけ避けたいと考えるのは患者も術者も同じです. 患者さんの“抜かないことはいいことだ”という, 信仰に近いような考えを説得するのはどの歯科矯正医も苦労するところですが, その心理に迎合するように, 忘れかけたころに非抜歯論が持ち上がっては消え, 消えては持ち上がる歴史を繰り返しており, 今また一部の若い歯科矯正医(特に歯科矯正併設の小児歯科医)の間で非抜歯論が頭を擡(もた)げ出しています.

 しかし, 抜歯非抜歯はあくまでも治療方針であって, 非抜歯が治療目標であっては本末転倒です. 独善的な非抜歯論は, 良心的な治療を志す歯科矯正医や質を求める患者にとって有害ですらあります.

 「早期の治療は, 永久歯を誘因して, 器具をつける時間が短縮されるか」
 すでに述べたとおりですが, もし歯科矯正専門医である私の我が子が,同じようなかみ合わせの異常を呈しているようでしたら何もせず「注意深い観察下に放置」します.お嬢様の歯並び咬み合わせについては, 前歯の永久歯が顔を見せ始めた頃に改めてお尋ねください. その時で十分です.


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