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歯科矯正相談室からの回答:かみ合わせと発音の関係

 ご質問は, 咬み合わせと発音の関係についてですが, これにお答えする前に, 構音(発音, 発声)ということについて少しお話します.

 構音の仕組みは, 歯や口蓋のような不動的器官(骨でできた硬い組織)と舌, 口唇, 軟口蓋などの可動的器官(筋肉などの軟らかい組織)の協調作用によって成り立っています. 英語のs,sh,z などを発音上, 歯擦音(sibilant)といいますが, この歯擦音は構音操作(発音の仕方)が比較的むずかしく, とくに前歯に歯の欠損や咬合異常などがあるとその習得がむずかしく, 誤った構音(発音)になりやすくなります.

 その典型がs,sh,z などをth で発音してしまう, つまり前歯の間に軽く舌を突き出して発音してしまうもので, これをlisping(リスピング)といい, 辞書では「舌足らずに発音すること」と訳されています. リスピング(サ行の構音障害)は, 舌の異常行動に起因することが多く, 一般にこれを舌癖(ことに舌突出癖)と呼んでいます.本で読んだ「咬み合わせが悪いと言葉の発音がうまくいかない」という場合の多くは, このことを指しています.

 さて, お母様が心配されているお子様の咬み合わせと発音の問題ですが, まず, 受診した歯科医のいう「自分で裏から押して出っ歯に」という言葉から, お子様には舌癖があり, その結果として出っ歯になっている(さらに開咬を伴っている可能性)が想像されます. この状態は, 上に述べた「前歯に咬合異常などがあると誤った構音(発音)になりやすくなる」という条件に当てはまりますが, これは, 言葉が舌足らずの発音(サ行の構音障害)になりやすいということであって, 言葉の発育が遅れるということではありません.

 お子様の前歯の咬み合わせの状態は, 舌の行動(癖)が原因で作られているため, 仮にいま歯科矯正装置で咬み合わせを治しても, 舌に癖が残っているかぎり構音(発音)の正しい習得あるいはリスピングの是正はむずかしいといえます.

 舌癖の歯科矯正は, ある年齢(10歳ぐらい)以上になったときにMFT(筋機能療法)と呼ばれる舌を中心とした口腔周囲筋のトレーニングによって行います. アメリカの小学校では, 学校にスピーチ・セラピスト(言語聴覚士)を置いてリスピングの歯科矯正指導を行っていると聞きますが, 日本の言語聴覚士は, 聾唖(ろうあ)や口蓋裂患者あるいは吃音患者に対応するだけで精一杯なため, 舌癖に対するトレーニングは一部の(歯科矯正)歯科医と衛生士が対応しているのが実情です. ただ, MFTには限界があり, その療法に否定的な先生がいることもまた確かです.

 では, お子様の場合は具体的にどうしたらいいかですが, 先の先生方が云われたようにしばらくこのまま様子を見ていて良いと思います. そして, 前歯が永久歯に代わり始める頃(8歳くらいでしょうか)に, 改めて歯科矯正専門医に相談されることでいいでしょう.

歯科的見地からのアドバイスとしては, いまはともかく虫歯を作らないよう規則正しい食生活と歯磨きの励行に努められることです.


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