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歯科矯正相談室からの回答:抜歯と舌の関係

 このご質問は,ご自身が歯科矯正治療をされたかあるいは現在歯科矯正治療中で, その経験的な感覚からのお尋ねか, あるいは想像から出てきた疑問なのか分かりませんが, いづれにしてもかなり珍しい内容の質問で, 普段の常套的な回答とは異なるため参考書を紐解きながら書いています.

 まず, 舌(ぜつ)は高度の運動性と変形性をもった軟組織(筋性器官)で, 形態にかなり適合しやすい融通性を有した組織です.

 舌の大きさや形態, 運動性にはかなり個人差があって, 特に舌の大き過ぎるものを巨舌症(大舌症)といいますが, 実際は大きさを客観的に測定する方法がないため, 判定は主観的なものです.

 舌が収容される空間を舌房(ぜつぼう)といいますが, 舌房に納まりきらないほどの巨舌には舌縮小術が行われることがありますが, 術後に味覚や発音の障害が残るなどの弊害があって, 現在はあまり積極的には行われていません.

 このような巨舌は例外として, 通常, 舌が問題になるのは舌癖(ぜつへき)です. 舌癖のほとんどは舌突出癖で, 別名「異常嚥下癖」といわれるように, 物を飲み込むときに舌を歯と歯の間に突き出す癖です. 舌癖を有する人は決して珍しくなく, かなりの人が多かれ少なかれ何らかの舌癖を持っているといわれています.

 舌癖は必ず歯列や咬合に影響を与えるというものではありませんが, 歯科矯正治療中に潜在していた舌癖が顕在化して治療を著しくむずかしくすることは, 歯科矯正家は誰しも経験するところです.

 日本人の場合, 歯科矯正治療のために歯数を減らすこと(抜歯)は, かなりの高率でとられる治療手段ですが, 抜歯によって舌房が著しく狭小化されるとはかぎりません.

 また, 形態に対する舌の適応性の良さもあって, 歯科矯正治療によって舌の窮屈感が生ずることは一般的にはないと考えています.

 経験的にそのような訴えを聞いた覚えがないのですが, 舌癖を有する患者の場合は窮屈感を感じているかもしれません. ただ例外的に, 下顎前突の顎変形症を外科歯科矯正した場合は舌の窮屈感を訴えることがあります.

 舌癖の場合も外科歯科矯正の場合も, 窮屈感という訴えがなくても舌に新しい位置を覚え込ませるトレ−ニングはしばしば必要です. もし舌に窮屈感があるとすれば, そのトレ−ニングよって窮屈感は解除されるはずです.
 
 もともと舌癖のために上下前歯が前突した不正咬合を, 抜歯して歯科矯正治療した場合に抜歯部位が開いてくることがあります. 一般的には問題になるほどの隙間は開いてきませんが, このような場合でも, 上下の咬合関係がしっかりしていれば, 審美的には多少問題があってもブリッジなどにすることなく, 通常はそのままです.

 抜歯による歯科矯正治療によって舌が窮屈感を感ずる, そしてそれがストレスになるとしたら, それは舌癖が原因と考えるべきでしょう. その感覚は, 一般的には歯科矯正治療では起きませんので, その恐れがあるとしたら, まえもって舌癖除去(正しい舌の位置を覚える)トレ−ニングをするのが賢明かもしれません.

 軟組織(舌や唇など)の問題は, 習癖だけでなく未知の部分がまだまだ沢山あります. 21世紀の歯科矯正学の課題のひとつといえるかもしれません.


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